活動報告

【記事投稿】新潟空港の活性化に向けて

投稿日 2018年6月3日

昨年9月に「財界にいがた」さんに寄稿、掲載いただいた記事です。
半年たちましたので、公開させていただきます。

特集 地方創生

田村要介・新潟市議会議員

【タイトル】

仙台空港にできて新潟空港にできないという「特別なこと」は存在しない

【小見出し】

仙台は特別な空港ではない

「施設はあまり新潟空港と変わらないな」

これが初めて仙台空港のターミナルを訪問した時の私の率直な感想です。若干こちらが大きいのでしょうが、ターミナル内のゾーニング、店舗の様子、全体的な雰囲気は新潟空港に似ている。ちょっと表現は適切ではありませんが、最近の空港と違う洗練されていない、少し田舎くささに好感を持ちました。明らかに違うのは空港の目前が「仙台空港駅」であること、空港全体が賑やかなこと、そして何よりも行きかう人の数、人種が多いこと。

先日、市議会の常任委員会で仙台空港の視察を行いました。私は市議になってから空港を利用することが増えました。新潟空港を利用するたびに、他の空港に後れを取ってることを痛感します。元気な都市とそうでない都市、空港の活気はまるで都市の状況を映し出す鏡のよう、空港は都市の顔なのです。

昨秋の知事選は本当に期待をしました。泉田県政ではなかなか進まなかった新潟の拠点化、新潟の未来ビジョンに対する期待です。ところが争点は原発の再稼働問題になり、この点は十分に議論が尽くされなかった。私は、新潟空港への上越新幹線を含めた鉄軌道の乗り入れは、新潟が浮上するための、いや新潟を沈没させないための最大の可能性であり、次世代に残すべき道筋であると思っています。報道によれば、米山知事は今のところ「無駄な公共投資」というレッテルを貼り、その可能性を閉ざすことを志向しているようです。この投資を「無駄」というなら、具体的な数値を持って、別の未来ビジョンをどうか示していただきたい。

仙台空港にはアクセス鉄道が乗り入れています。駅は空港駅も含め3駅。総延長7キロ、投資額は300億程度とのことでした。平成19年に開業し、初年度は250万人。平成22年の大震災により150万人まで利用客を減らしましたが、現在は、344万人がこの鉄道を利用します。鉄道沿線には「なとりりんくうタウン」を開業に併せて開発しました。空港のある名取市の人口と世帯数は、10年経過した今も増加の一途をたどっています。大型ショッピングモールも出店され、更なる開発、産業立地の可能性を充分に担保しています。

実は、この鉄道は宮城県、仙台市など111名の株主からなる第3セクターが運営していますが、まだ黒字には転嫁していません。赤字なのです。

知事にお尋ねしたい。知事の唱える運営上の「黒字」が条件であるならば、10年経過したこの仙台空港の未来像はやはり「失敗であった」というのでしょうか。鉄道は赤字でも、副次的な効果が十分にもたらされている。街全体が鉄道の赤字をカバーしている。大震災という外的要因はあるかもしれませんが、鉄路があったからこそ、この仙台空港の早期復興があったのではありませんか。鉄路があるからこそ、速やかな空港民営化にもつなげられたのではありませんか。この鉄道が新たな可能性をおおいに創りだしたのではありませんか。

仙台空港は新しい「民営空港」です。コンセッション方式の激しい争奪戦の末、東急前田豊通グループによる運営が始まってはや1年が経過しました。運よく、今回の視察の際、その運営会社の部長さんから話をお聞きすることができました。仙台空港の利用促進、東北全体の活性化のために一体、彼らは何を仕掛けているのか。

「基本的には地道な営業活動の結集である。これしかありません」と部長は仰っていました。10人程度の営業マンが東北各県、各都市、観光地へ出向き、様々な連携網を構築します。併せて台湾、香港などアジア中心都市との連携確保に向かいます。こちらから積極的に出向き、徹底した営業活動、新たなネットワーク、信用の構築を繰り返す。まず、民間では「当たり前」のことを初めからやり直しているだけなのです。

現在の成果から報告しますと、ソウル便は週4往復から7往復に、台北便が週2往復から8往復に、国際線全体では週10往復から19往復に増便されています。また、この7月からは神戸便が1日2往復で就航しました。更に9月からはLCCが札幌便と台北便を就航いたします。仙台空港発着の2次交通も充実しました。福島・会津若松線、松島・平泉線、鶴岡・酒田線、山形路線の4路線が民営化後に開設されています。

今後は空港内施設をリニューアルし、東北6県のみならず、地元市町村から海外まで、幅広い観光情報を提供する観光案内所を拡げていきます。挙げたらきりがありませんが、稼ぐぞ!東北頑張るぞ!という意気込みで成果を挙げているのです。

仙台でできて、新潟にできないなんて特別なことはやっぱり「存在しない」のです。

もう一度知事に問います。なぜ、新潟では仙台と同じことができないのでしょうか。

【小見出し】

民営化直後に改善

鉄道だけでなく、仙台空港も赤字です。運営者の言葉を借りれば「どちらももう少しでトントンでは」と強めに仰っていました。今期も今のところ赤字予想ですが、さらに縮小が見込まれているそうです。今後、就航便が増え、空港内の商業施設も拡充して、集客が見込めるから強めに言えるのでしょう。

仙台空港の民営化以前の2015年度の利用客は311万人。昨年は316万人、5万人の増加です。今年は25万人増の341万人、20年度は410万人を目標としています。早い段階での600万人達成を掲げ仙台空港は前に進んでいるのです。

この民営化の理念、宮城だけが良ければいいというところには存在しません。そこには仙台空港の拠点性を向上させて、共に発展していこうじゃないかという東北全体の強い意志があるのです。その目的達成のために、民間のノウハウを十分に活用し、地域に最大限還元しようとしているのです。そこに震災からの復興という強い意志が加わって前進しているのです。

では新潟はどうなのか。まず経済界、そしてそこで暮らしている新潟の皆さまに空港を取り巻く現状をより認識してもらう必要性があります。客観的事実を共有した上で、ともに考える。協議会は非公開ですが、なぜ非公開にしなければいけないのか。民間側から発せられる生の声、突き上げが結集することを避けるための方策のようにも見えてきてしまいます。

行政側から正確な情報開示をいただくことが不可欠となりますが、我々議員も真摯に学び、考え、訴えなければいけません。次世代のためにも、知らなかったではすまないのです。

例えば、国管理空港の中で新潟は赤字ワーストであること(厳密には稚内空港がワースト。新潟は2番目。EBITDA=利払前税引取引前償却営業利益ベース)その事実すら知らない人がほとんどでしょう。その事実を知っていただいた上で、新潟空港はそれでいいのかと問わなければいけない。なぜ、そこまで赤字なのか。どうして新幹線の延伸ができなかったのか。なぜ、民営化に進めないのか。仮に、上手くいかなかった場合は何が起きるのか。新潟空港のおかれている現実をきちんと開示していただいた上で、ことを進める必要があるのです。

【本当の勝負はこれから】

「間もなく来日が4回目、5回目という訪日客が出てこようという中で、これをどうやって取り込むのか」国際線の活性化に向けて、「ここが勝負である」と前述の仙台国際空港㈱の部長さんは仰っていました。また、国内に向けては、西日本各都市への営業を積極的に展開することを宣言し、店を出し、企業マンを派遣するそうです。既に先へ先へと進んでいるのです。今、我々が立ち止まっているこの瞬間も仙台空港は、その仕掛け創り、ネットワークの構築に全力を挙げているのです。

過日、新潟空港が「訪日支援空港」に認定されました。この認定により着陸料を割引けるようになりますし、色々な特典も付くのでしょう。質疑応答の際、議員より「この認定が今後どのように影響していくとお考えか」いう主旨の質問がなされました。その回答は「着陸料の割引より、航空機の座席が埋まるかどうかが一番重要な要素であり、正直あまり関係ないと感じている」と大変にシビアなものでした。全く影響がないこともないとは思うのですが、これが役所的でない、民間最前線の生の声なのです。

「お客さま(航空機会社)に対し、当空港はどれだけ安心できる搭乗率を提供することができるのか、その点で他空港と差別化することが一番重要なのです」

コストも大切ですが、やはり飛行機は「座席が埋まるところ」に向かう、このことに尽きるということなのでしょう。

自分のビジョンだけではなく、仙台空港は東北全体のビジョンを吸収しながら、前に向いて走り始めています。交流人口の拡大という点では仙台空港が中心となって東北地方を動かしているといっても過言ではないでしょう。国分町も一時の賑わいは終わったと言われていますが、国外、国内客で充分に賑わっていました。楽天イーグルスの活躍も街を活気つけています。既に仙台は成功の連鎖が生まれているのです。これが拠点都市、政令市の役割なのだと実感できました。

では、新潟はどうなのか。仙台ほどではないにしても、そのポテンシャルの高さは自他ともに知っているはずです。そのことは何よりもそこで暮らしている我々が一番知っているはずです。25年東京に暮らしたからこそ、私もよく解っているつもりです。

でもそれがうまく循環しない。発信できない。繋がらない。

一体、なぜなのか。

ご周知のとおり、地方創生には都市間連携が重要なファクターとなっています。他都市と上手く連携が取れているのでしょうか。お隣の県は違う方向を向いているのではないでしょうか。

胡坐をかいているうちに、新潟が、ガラパゴス化してしまったのではないでしょうか。拠点化が上手くいかなかったのは、県、市の役割分担が上手くいかなかったからと人ごとのよう言っている場合ではありません。危機的な状況なのです。

そういうことも踏まえ、(ちょっと強引ですが、今までのことを考えると)だから中途半端な対応では駄目だと訴えるのです。だからこそ、私は「新幹線などの鉄路の空港乗り入れ」を強く訴えるのです。だからこそ、空港の活性化策と一緒にインフラの整備、更には民営化を志向する必要があると訴えるのです。

新潟の各市町村だけでなく、群馬県などの隣県の発展、観光地の繁栄などを実現すること、手を取り合うことが必要なのです。

これが、アジアの玄関口、日本海側唯一の政令市を抱える新潟の役割なのではないでしょうか。

本気でどうにかしようとするのであるならば、仙台空港と同様、鉄路アクセスの導入と空港の民営化はできる。達成しなければいけない。本当の勝負はこれからなのです。

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